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零章:クルトの悪魔 [零章:クルトの悪魔]


零章:クルトの悪魔

初代クルト王 アズラ .jpg

初代クルト王 アズラ

大海の彼方、とある大陸の半島から先に、幾つかの島が点在し、「クルタミア」と呼ばれる人々が住んでいた。
クルタミアは魔法使いが多かったが、長く暮らすうちに、3種類の優れた能力を持つ種族へと別れ、それぞれ同族同士が固まって住むようになった。


「クルタミア」…主に魔法の力が強い種族。

「トロン」…剣術の能力に優れた、1番多く存在する種族。

「サラの民」…まじないや予知の力が強く、手先が器用な種族。時に、人以外の姿に変化する。


互いに国家を持ち、干渉はなるべく避け、協力すべき事柄は、互いに助け合って暮らしていた。

ある日トロンの島に、サラの民が訪ねてきた。
サラの民に、大切な話があると言われ、トロンはクルタミアに伝令を飛ばし、使者を招き入れた。
サラの民が言うには、トロンと共に掘り進めてきた、クルトダイヤの鉱山に悪魔が棲みつき、大勢の仲間が亡き者にされたと言うことだった。
自分達の力ではどうすることも出来ず、剣術に長けたトロンと、魔力に長けたクルタミアに、力を貸して欲しいと願い出た。
トロンとクルタミアは調査団を編成し、サラの民の島に向かった。その中には、クルタミアの王もいた。
サラの民は、沢山の仲間を失った恐怖と、元来の臆病な性格から、調査団には加わらなかった。

鉱山の入り口から地中深く進むと、手に持ったランタンの光に反射して、赤黒く光る、大きなクルトダイヤの塊が見えた。
その上に、悠々と居眠りをする、黒い大きな悪魔が見えた。トロンは剣を構え、クルタミアは手をかざした…。

クルタミアが炎の魔法を唱え放つと、悪魔は大声を上げて悶えた。背に生えた羽で風を起こし、尻尾を振り回して攻撃を仕掛けてきたが、それをトロンの剣士達が、武器で対抗した。
しかし、悪魔の皮膚は硬く、急所と思われる目には、魔法も剣も届かず、深い傷を負わせたものの、どうしても悪魔に止めを刺すことは叶わなかった。

「長引くと仲間が傷つくだけだ」…クルタミアの王は、なんとか悪魔を封じる方法はないかと考えた。
そして、「封印の呪文」を唱え、クルタミアの王自らの体に、悪魔を閉じこめることに成功した。
追い払うだけでは、いずれまた他の島で、悪さをしかねない。悪魔を常に監視・管理出来る環境を考えたら、この方法しかないと考えたのだった。
クルタミアの王は、懐に悪魔を飼う事により、悪魔を抑えつける力に反発した時に生じる、爆発的な魔力に気付いた。攻撃の魔法だけではなく、防御の魔法も、治癒の魔法も、格段に飛躍していた。

クルタミアが、悪魔は消えたとサラの民に伝えると、サラの民の代表者は、恐る恐る島に戻り、クルタミアの王を訪ねた。
その時サラの民が見たのは、悪魔の力を自分の力として操る、クルタミアの王の姿だった。
サラの民は、一目散に逃げ出した。
「クルタミアの王が、悪魔になった」「クルタミアの王が、悪魔の力を手に入れた」。
いずれクルタミアも、サラの民を喰いつくす。それを許したトロンも、信じることが出来ない…。
人間は恐ろしい。あの悪魔を喰うなんて。人間こそ信じることが出来ない…。
サラの民はこの事を口々に伝え、自分達が持つ力を使って、あらゆる姿に変化した。
ある者はイルカになり、海に逃げた。ある者はネズミになり、暗闇に身を潜めた。
一度姿を変えたサラの民は、二度と人の姿に戻ることはなかった。

クルタミアの王は、トロンの王と話し合った。
そして、サラの民が我らを許し、この島に戻るまで、待つことにした。
何年かかっても、何代に渡る事になっても、構わない。サラの民の許しを貰い、3つに別れた種族の心を、一つにしたい。
これ以上、悪魔に悪さをさせないために、懐で悪魔を飼い、サラの民が戻るまで、この島を守ろう。
クルタミアの王の決心は、固かった。

トロンの王も同意した。しかし、ただ遠くで見守るだけという訳にはいかない。
あの時悪魔は、クルタミアとトロンの魔法と剣によって弱くなっていた。いずれまた力を蓄えて、反撃してくるかもしれない。若しくは、クルタミアの王をたぶらかして、悪しき行いをするかもしれない。
それに、悪魔が放つ邪気を嗅ぎつけ、寄ってくる他の悪魔もいるかもしれない。

トロンはクルタミアに、腕の立つ王国剣士を仕えさせることにした。
クルタミアの王が、悪魔の力に負けるようなことが有れば、王の首を刎ねるように。
そして、近づく他の悪魔から、島と民を守るように。常に鍛錬し、そうならないことを祈りつつ。

クルタミアは、島の鉱山口の近くに城を建て、クルタミアの王族が住むことにした。
いずれサラの民が戻ったら、明け渡すつもりであった。
鉱山口に祭壇を用意し、サラの民が座るべき椅子を、飾り祀った。
やがてサラの民の存在は、クルタミアとトロンの信仰となった。
その島は、「クルト島」と呼ばれ、やがて「クルト王国」と名乗るようになった。

幾重にも時を重ねたが、未だにサラの民は、島に戻らない。
それでもクルタミアの王族と、トロンの王国剣士達は、何世代もサラの民を待ち続けた。


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ましゅー

コメント有り難うございました。
さめ宗家めぐ さんのブログを読んでいると
無性に小説読みたくなります。。。
自分の居る場所ではなかなか日本語を見かけないので
恋しいです・・・

っと、わけわからないコメントですみません。
駄文失礼いたしました。
また訪問すると思いますが、よろしくお願いいたします。
by ましゅー (2009-02-19 17:07) 

さめ宗家めぐ

>ましゅーさん
遊びに来てくれて、ありがとうございますm(_ _)m
コチラは、日本語どっぷりの、小説ブログでございます。
日本語を見かけない場所には、私は観光以外で行ったことがないのですが、
恋しくさせてしまったのが、良いことか悪いことか…。
なんか申し訳ないです。
たまにしか更新出来ないとは思いますが、宜しければまた遊びに来てください!
by さめ宗家めぐ (2009-02-19 17:37) 

Riruru

これから どうなるのかものすごく楽しみな内容です!!
挿絵もすごーい!!♪

by Riruru (2009-02-24 15:32) 

さめ宗家めぐ

>Riruruさん
キャー!nice!&コメントありがとうございます♪
最初はどうしても、世界観を説明する形になっちゃうんですよね~(^^;)
堅苦しい始まりですが、どんどん砕けて行ってしまうと思います。
良かったらまた、遊びに来てくださいませm(_ _)m

by さめ宗家めぐ (2009-02-24 16:44) 

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